クラウド会計の謳い文句として、「誰でも簡単に」「自動で」「簿記や会計がわからなくても」といったものをよく耳にしますが、実際のところどうなのでしょうか。
正直なところ簿記の知識なしで完結させることは難しいかなと思います。
どうしても簿記の知識は必要
クラウド会計は、ネットバンキングであればクラウド会計と連動して、クラウド会計に自動で口座の動きを取り込んでくれるということができます。
この点は確かに、非常に効率的です。
紙の通帳をコピーしてとか、手で入力してとかいらなくなるので。
ですが、同期して終わりではありません。
クラウド会計での経理の流れを大まかに整理すると、
①ネットバンキングと同期 → ②仕訳に自動登録 → ③自動登録されないものを登録 → ④チェック
といった感じになります。
①だけでは、口座の中身をクラウド会計に同期したに過ぎないので、同期した入出金を会計上の「仕訳」として登録しなければなりません。
その仕訳の登録が、②で自動でやってくれるか、③で自分で登録するか、に分かれます。
②まで全て自動でできればかなり楽ですが、実際は、単純な取引しか自動登録できない事が多いです。
単純な取引とは、例えば、
・水道光熱費
・家賃
・振込手数料
・ネット代
なでです。
共通するのは、毎月発生するもの、ネットバンキングの摘要からAIが推察できるもの、といった点です。
口座の摘要には何も書いていないこともあるので、AIの推察には限界があります。
必ず②の自動登録できずに漏れた取引を、③で自分で仕訳に登録する作業が必要になります。
この作業を簿記の知識なしでできるかというと、わかりやすい取引であれば可能でしょうが、そうでない場合もあります。
一見簡単な処理と思っても、実際は複数行仕訳が必要なる処理も出てきたりします。
年に1回あるような取引やイレギュラーなものが出た時にも、対処できるか微妙なところです。
ググれば出てくる可能性もありますが、ピンポイントで合致しているかわからない場合もあるでしょう。
そして、最後の工程として、チェックは必ず必要です。
自動登録の中には、誤った推測で仕訳登録されている場合もあるからです。
これが意外とややこしく、誤った登録を見つけ出すという作業を簿記の知識なしでできるかというと、おそらく厳しいと思います。
とくに、損益だけでなく、資産負債にまたがるような仕訳があると、貸借対照表の決算書残高に影響してしまいます。
さらには、年に一度の決算では、決算特有の仕訳や計算が必要になるので、そこまでやるとなるとやはり簿記の知識は必須になります。
完璧を目指さなくていいから使ってみる
簿記の知識なしで完結させるというのは、実際難しいです。
ですが、だからといって全く使えないわけではありません。
いきなり全てを完璧に作るというのは、何事においても難しいことですから、できるところまでは自分の手で触ってみるというのがいいでしょう。
できるところまでやってみて、その先は税理士のサポートを受けながら完成に近づけていくというのが現実的です。
最初の導入でつまずきそうな場合も、同様にサポートしてもらうのがいいでしょう。
そうすれば、少しずつ理解も深まりますし、できる事も増えていくはずです。
自分の手で経理をするという事は、自分の事業をお金の面で理解するうえでとても大切なことです。
この感覚は何もせずに身につくものではなく、経理をするからこそ身につくものでもあります。
その力は必ず経営にも役立つものなので、ぜひ挑戦して欲しいなという思いです。
当事務所でもクラウド会計の導入運用をサポートしています。