「医療費控除をすると税金が減る」とはどういうことか。その仕組みを紐解きます。
思ったより税金が減らない…?
医療費控除についてよくある勘違いとして、
・医療費の10万円を超えた分が戻ってくる
・医療費控除の額がそのまま税金から引かれる
・医療費が返ってくる
といったあたりは聞いたことがあります。
一番下は、医療費控除はあくまで税金上の仕組みなので、医療費自体が返ってくるわけではありません。
上二つは、結構聞く事があり、実際に医療費控除を使ってみて、「あれ?こんだけしか戻ってこないの」と感じられる方もいます。
税金は確かに減るのですが、思ったほどでもないと感じてしまうからくりが、所得税の計算の仕組みにあります。
所得税の計算の仕組み
所得税は、簡単に書くと以下のような過程で計算されます。
・(所得 ー 所得控除) × 税率 = 所得税
所得というのは、サラリーマンなら給与、フリーランスなら収入から経費を引いた利益です。
この所得からさらに控除できる所得控除という仕組みがあります。
医療費控除は、その所得控除の一つです。配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除なども所得控除の仲間です。
そして、所得控除を引いた金額に対して、最後に税率を掛けて、所得税が計算されます。
なので、医療費控除は、税金から直接引かれているわけではなく、税金を算出する前段階に、所得から引くものということです。
簡単な例として、
所得が500万円、医療費控除が10万円、税率20%の場合で考えてみます(ほかの要素は省略)。
(所得500万円 ー 医療費控除10万円)× 20% = 所得税98万円
仮に医療費控除がないとすると
(所得500万円 ー 医療費控除 0円)× 20% = 所得税100万円
比較すると、医療費控除を受けた方が所得税2万円少なくなるという結果。
医療費控除10万円で、2万円の節税ということです。
こうみると、節税が思ったより少ないと感じるのも分かる気がします。
さらに加えると、医療費控除は医療費が10万円を超えた分から使えるというルールなので、医療費トータルで考えると、医療費20万円で2万円の節税です。
実際には、所得税は所得が高いほど税率が高くなるという仕組みなので、税率が高くなれば控除できる税金も増えます。
それでも、かかった医療費に対して、節税のインパクトが小さいと感じてしまうかもしれません。
医療費を抑えられるに越したことはない
医療費控除の節税の仕組みを見てきましたが、節税効果は思ったより少ないと感じる場合が多いかもしれません。
医療費控除は、家族分と合わせて年間10万円超えた分から使えます。
年間10万円と言うとなかなかの金額です。
もちろん、医療費が高額になってしまう事情がある場合には、ぜひ活用したいですし、むしろそのための制度です。
ただ、医療費控除で節税を考えるよりも、一年間健康に過ごし、その結果として医療費を抑えられた方が、医療費の出費も減り、家族も健康でいられたという事ですから、トータルのメリットは大きいと考えられるのではないでしょうか。
もし、医療費を集計して10万円を超えなくても、がっかりするという事ではなく、それは喜ぶべきことかなと思います。