経理において、細かい勘定科目にこだわるよりも、「費用」と「資産」を正しく区別することが重要です。
勘定科目よりも大事な「費用」と「資産」の区別
「この支払はどの勘定科目を使ったらいいですか」
こういう質問をよくいただきます。
例えば、文房具を買って、消耗品か、事務用品費か、はたまた雑費か。
これ、どれでも正解です。
というのもこれらはすべて「費用」に分類された勘定科目だからです。
経理では、勘定科目よりも先に、「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」という大きな分類があります。
そして各分類の中で、勘定科目が存在しています。
「費用」という大きな枠を間違えていなければ、勘定科目は自分が把握しやすい科目を使用して大丈夫です(名称と内容がかけ離れてるのはよくないですが)。
それよりも大切なのは勘定科目より前の分類で、特に「費用」か「資産」かの判断が必要な場面が多く出てきます。
費用と資産の違い
資産は、費用とは異なり、支払った金額を一度に費用に落とせません。
資産に該当するものは、一定の年数で按分して各年の費用にするルールがあります。
例えば、購入価格80万円で4年で費用にするという資産だったら、20万円ずつ各年の費用にするというイメージです。
ちなみに費用に按分する年数は、資産の種類ごとに法律で決まっています(法定耐用年数といいます)。
資産は購入した年だけではなく、その年以降も資産を使用することで事業の売上に貢献していくものという考えがあります。
なので、その各期間に按分して費用とすることで、より実態に近い利益を反映することを目的としているのです。
「費用」と「資産」を間違えてはいけない理由
このように資産は一度に全額を費用にできません。
これを間違えるとなぜいけないのかという理由です。
利益が変わってしまう=税金が変わる
資産にすべきものを費用として経理してしまうと、税金が変わってしまいます。
税金は、
・利益×税率=税金
という式で算出します。
利益は「売上ー費用」で計算するので、この費用の部分が正しくないということは、利益も正しく計算されていないということになります。
すなわち、税金の計算も間違って算出されてしまうのです。
記載する書類が違う
費用と資産では、記載される書類が異なります。
費用は、「損益計算書」(いわゆるPL)という書類に、資産は「貸借対照表」(いわゆるBS)という書類にそれぞれ記載されます。
よくいう「決算書」というのはこれら2つの書類をいいます(他にもありますが)。
PLとBSは相互に関連しあっている書類ではありますが、別々の書類なので、しっかり区別しないと正しい決算書が出来上がりません。
先程の利益が変わる=税金が変わるというのと結果的に繋がりますが、それぞれの書類の数字が正しく記載されていないと、決算書の正確性が担保されていないということになります。
「費用」と「資産」の区別を気をつけるべき支払い
では、実際にどういう支払いがあった時に「費用」と「資産」の区別を気をつけるべきか。
すべてを取り上げるのは不可能ですが、よく出るものを紹介します。
金額が30万円以上かどうか
モノを買った時に「資産」か「費用」かで、まず抑えておきたいのは、「30万円」という金額です。
青色申告者であれば、
30万円以上のものは、「資産」となり、
30万円未満のものは全額「費用」とできます。
(青色申告者には必ずなっておきましょう)
30万円未満でもさらに細分化はありますが、
とりあえず
30万円以上は資産。
30万円未満は費用。
このように覚えておきましょう。
契約期間が1年を超えるサービスについて一括で払った場合
契約期間が1年を超えるようなサービスで、その金額を一括で払った場合もその金額を一度に費用にはできません。
一括で支払った金額を契約期間に渡って期間按分して費用にしなければいけません。
よくあるのは火災保険や損害保険などです。
例えば、契約期間5年分の保険料50万円を最初に一括で払ったとすると、
経費にできるのは各年10万円ずつとなります。
一気に50万円を費用とはできません。
こういった継続的なサービスを受けるときには、契約期間と支払い方法を確認しておきましょう。
まとめ
経理をするときは、勘定科目の判断よりも先に、まずそれが「費用」なのか「資産」なのかを考える事が大事です。
30万円、契約期間が1年超の支払いに該当しそうなときは一旦立ち止まって検討してみましょう。